靴の踵修理はShoe Gooで安上がり

革靴の踵が減ってきた。踵の修理を靴屋や街の修理屋に出すと、一足当たり2500円から3000円取られる。あんなもんは知識と道具さえあれば誰でもできる。どう考えてもぼったくりだ。貧乏人としては納得できない。

そういうわけで再びShoe Gooの出番である。再びと言うのは、このブログを始めた初期の頃にShoe Gooでの踵修理を投稿したのだ。しかしその時は、写真が一つもないあまりに手抜きな記事だったので、この際再掲ネタではあるが投稿することにした。

Shoe Gooってのはこれね。

で、踵の減った革靴というのはこれ。

普通に靴屋か修理屋に出すと、彼らは減った踵から釘を抜き、踵をむしり取ってから接着剤を除去し、新しい踵を接着剤で貼り付けて釘をうち、はみ出した部分を削り、最後に補色して完成という工程を踏む。

Shoe Gooの場合は、減った部分にShoe Gooを埋める。それだけ。では始める。まず用意するのは、どこの家にもある鋏、ガムテープ、マスキングテープ、そしてアクリル板だ。いやマスキングテープとアクリル板は普通の家庭にはないかも知れないが、我が家には普通にある。クラフトマンには必要不可欠なものだからね。

まずは、踵にヤスリを当て、表面を均し、Shoe Gooを塗りたくない場所にマスキングする。

次に、アクリル板を適当な大きさに切って、踵周りにShoe Gooを埋める壁を作り、ガムテープで固定する。これで準備完了。

早速Shoe Gooで隙間を埋めていく。

コツは二つだ。一つ目は、空気が入らないようにしっかりと隙間を埋めるようにShoe Gooを押し込むこと。もう一つは、所謂充填剤の基本だが、乾燥すると固くなるものは、必ず乾燥の過程で痩せるということを見越して、少し多めに盛ることだ。

Shoe Gooを盛った後は、氷で表面を均すと滑らかに仕上がる。

後は乾燥して硬化するまで放置。いやー、簡単簡単。

もう片方も同様に作業し、順次踵のすり減った靴を修理していく。

効果時間は説明書きに書いてはあるが、あまり参考にならない。Shoe Gooを充填した箇所の厚みや気温によって乾燥時間はまちまちだ。今は夏場だが、厚みは4mmを超えているので、説明書にある時間の倍に相当する48時間は見ておく。冬場なら更にその倍は見た方がいい。Shoe Gooを使う場合のボトルネックはこの乾燥時間の長さだ。靴をあまり持っていない方には向かないかも知れない。

さて、48時間後、どうなったかアクリル板を取り外してみると・・・。

穴開いてるし・・・。

はみ出しちゃってるし・・・。

羽つき餃子みたいになっちゃってるし・・・。

うん、今回やった四足とも失敗してるね。

「くそがぁぁぁぁーっ。なんじゃこりゃぁぁっ。欠陥商品だろ、ネットで酷評してやる。」

などと騒ぐのは、知識も技術もないのを棚に上げ、てめえの無能さを製品の欠陥と言い張る低能共のすることだ。よくネットの口コミで見るレビューの大半がこれだな。

まあこれは、Shoe Gooの充填時に空気を抜ききれなかったか、内部に僅かに残った空気が硬化の過程でShoe Gooが痩せていくのと同時に膨らんだか、或いはその両方か、何れにせよ「想定の範囲内」である。別に空いた隙間にもう一度Shoe Gooを埋め込んで固めりゃいいだけの話だし。

盛って、埋めて、氷で均して、はい次っ・・・。

慌てず、騒がず、こんな調子で再調整して硬化を待つ。

 

・・・うん、今度は大丈夫そうだ。駄目なら、何度でも充填し直して乾かせばいい。こういうものは失敗からのリカバリこそがノウハウだ。たまたまうまくいった成功例からは何も学べない。

ここまで来たら、はみ出した余分なShoe Gooを削り取る。ここで「どこの家庭にもある」ベルトサンダーでバイィィーンとやればさっくり取れる。「万が一ベルトサンダーがない場合」は、別に紙やすりでもいい。

ここまでやると、大体こんな感じになる。最初の工程で隙間なくShoe Gooを埋められていたら、一発でここまで来る筈だった。

  

この通り磨り減った部分は無事(でもなかったが)に埋めることが出来たのだが、これで終わりにするというわけにはいかない。

何せ俺はセミプロだからな。というわけで、次ははみ出したShoe Gooを削る過程で傷つけてしまった革の部分の補色にかかる。ここで例によってコロンブスのアドカラーの出番である。


まずはマスキングし、アドカラーで軽く色当てしてみる。

明るすぎるので、黒を混ぜて焦げ茶にする。アドカラーは、少し水を足してやると色が混ぜやすくなる。やや明るめに調整するのがコツだ。

今度は良さそうだ。次は色の濃い靴用に更にトーンを落とす。

ついでに、荒れたコバもアドカラーで修復しておこう。

革の部分の補色が終わったら、今度はShoe Gooで埋めた踵の仕上げにかかる。

Shoe Gooで埋めた部分と元の素材との間には微細な隙間があるので、補色前にまずこれを埋める。今度はかかと部分を残してマスキングする。

アドベースを塗って、隙間を埋める。

乾燥したら、紙やすりで均す。

最後にアドカラー黒を塗って完成。

まあこれなら普通に履いている分には、他人には靴屋に修理に出したものと区別はつかないね。

因みに下のチャカブーツは、違いが分かるように(正直に言うと面倒くさくなったから)アドベースによる下地処理をせずにアドカラーだけで仕上げた。あまり変わらないかな(笑)。

さて、かかったコストだが、アクリル板は再利用できるし、アドカラーは指先程度しか使っていないので値段に換算できるほどの使用量ではない。残っているShoe Gooの量から換算するに、一足当たり概ね150円と言ったところか。四足で600円。修理屋に出せば12000円。

コスパは比ぶべくもない。

「私の物は修理するのに、自分の物はすぐ買い換えるのね・・・。」という妻の追求を躱す狙いもあったのだが、ぼーっとしている時間にチョチョイとやって、チコちゃんにも叱られることなく、ゴルフ一回分ほどの費用が浮いた。

「奥さん、自分のも修理して使ってますよぉ~。」

40分ほど歩いた後の状態がこれ。特段減った様子もなし。

合皮とパテントレザーはアドカラーと染めQで新品同様

最近の合成皮革の技術は舐められない。一見しただけでは皮革なのか合成皮革なのか見分けがつかないものも少なくない。

まぁ、本皮か合皮かはどうでもいい。一昔前と違い、最近は明らかに合皮であってもそれがチープな製品とは限らない。

何が問題かというと、合皮の一部やポリエチレンにポリウレタン加工した素材或いはパテントレザー(エナメル革など)は、実は湿気に弱い。

それらの素材の物を箱に入れ、クローゼットなどにしまっとおくと、数年で劣化してしまう。例えばこれ。

見ての通り、バーニーズニューヨーク定番のスタッズミニトートバッグ。ちょっとした外出に便利なので、妻はよく気軽に持ち歩いていたのだが、このようにハンドル部分が劣化し、おそらくポリなんちゃら素材が剥離した。で・・・

「こんなになっちゃったの。」

と言われた。うん、大したものじゃないし、よくここまで使ったねということで新しいのを買ってあげることにした。

なので、駄目になった方は捨てるのかと思いきや、

「スーパーに買物に行く位ならまだ使えるから。」

と一向に捨てようとしない。

「おいこらマテ・・・」

お前がそんなの持ち歩いてたら「まあ・・・あんなになっても買ってもらえないのかしら・・・」と思われるだろうが。

忘れてた。妻は勿体ない派だった。

ということで例によってリペアを開始する。まずは軽くサンドペーパーを当て、劣化したポリなんちゃら素材の膜を剥がす。コツは下地素材を傷めないようにすることと、縫い目部分にペーパーを当てないこと。特に縫い目の糸を荒らしてしまうと、毛羽立って手触りに影響するので注意だ。

次に脱脂。何かを塗る前の基本だ。溶剤を使うとポリなんちゃら素材が溶けてベタつくとまずいので、アルコール除菌のウエットティッシュで拭く。

次に何を塗るかだが、バッグのハンドルに塗る以上、被膜の硬いものは使えない。罅が入ってしまうからだ。そこで今回はこれを使う。コロンブスのアドカラーだ。

しっかり塗り込むには指で擦り付けるのがいい。指に付いたアドカラーは石鹸で洗うと簡単に取れる。そしてすべての塗り作業に共通して言えることは、薄く塗り、何度もそれを繰り返すことで綺麗に仕上げることができる。

但し、アドカラーは性質上被膜が厚くなるので、あまり何度も塗り重ねると固くなるから要注意だ。しっかり着色できて、見かけ上問題ないという程度でやめておく。

まぁ、こんな感じだ。こんなことなら買わなきゃよかったぜ゜・・・。

ついでに、この際だからとクローゼットの中に仕舞われているバッグも一通り手入れをしていたら、ColeHaan のバッグのハンドルがバーニーズのトートバッグと同様の状態になっているのを見つけた。こちらはパテントレザー(エナメル革)とヌバックの編み込みになっているバッグで、ハンドル部分がエナメル仕上げになっているものだ。

エナメル仕上げの革にはアドカラーは使えない。素材感が全く違い、艶が出ないのだ。こういう物の場合は、株式会社「染めQテクノロジー」の染めQを使う。


「染めQ」で塗った後に「染めQ保護艶出し」で仕上げると、艶が出てパテントレザーと同様の素材感になる。スプレータイプなので、着色したくない部分にはしっかりとマスキングすることと、やはり何度も薄く塗り重ねることがコツだ。

くどいので詳細は省くが、劣化したエナメル皮膜を剥がし、脱脂した上で染めQで着色し、保護艶出しスプレーを塗り重ねる。

どうだろうか。今回はハンドルの片方だけ補修してみた。一般にパテントレザーは補修ができないと言われるが、どちらが補修した方か見分けがつくだろうか。

まぁ、これでもう暫く使って貰おう。

皮革の痛みはSAPHIRカラー補修クリームとアドカラーで何とかなる

皮革には経年劣化がつきもの

皮革製品は、長く使っていると徐々に傷んでひび割れてくる。そうならないように手入れを怠らないようにしたいものだが、財布や小物類ならともかく、ソファーやダイニングの椅子、車などのレザーシートやバッグ類となるとなかなかそうもいかず、段々とダメージが蓄積していく。革のバッグ類などもそうだ。どうしても色が退行したり、擦れて傷んでくる。痛み具合が酷くなると用廃となり、新しいものを買うことになるわけだが、それがちょっと値の張るものともなると、余程のお金持ちでもない限り、おいそれと買い換えるわけにもいかない。

修理業者は高い

そこで修復作業となるのだが、そういうものを生業としている業者は存在する。頼めば綺麗に直るらしい。しかし、問題はその費用だ。その技術が優れていればそれなりに費用もかかるのが道理だ。リペアの費用で新品が買えてしまうようなことはないが、「そんなにかかるならいっそ・・・」と考えてしまいたくなるほどにはかかるものだ。

自分で出来ることは自分でやる

今回は、そんな皮革修理に挑戦してみたので記録として残しておく。対象はダイニングの椅子だ。

一見綺麗に見えるものの、長年使い込んだ椅子は、よく見ると下の写真のように傷んでひび割れてしまっている。これを修復しようというわけだ。

最初にアセトンを脱脂綿に含ませ、革の表面の油脂分を拭き取る。これによる革に与えるダメージは大きいので、本当はあまりやらない方がよいと思う。革へのダメージを考えると専用の革クリーナーでもよい。今回は数日前に手入れクリームを塗ったばかりだったので、敢えて拭き取ることにした。ゴシゴシやらずにウエスでつけたアセトンでさっと拭き取る。


補色クリームなら絶対SAPHIR Creme Renovatriceがいい

修復にはフランスのAVEL社が出しているSAPHIR Creme Renovatriceを使う。日本語でググるなら「サフィール カラー補修クリーム」とかで検索できると思う。



もしかしたら、この記事を読んだ人の中には「こいつ馬鹿じゃね・・・」と思う人もいるのではないか。そう、SAPHIR(サフィール)って一般的には靴クリームなどでよく見かけるからだ。そして靴クリームは色落ちや色移りする代表的なものだ。そんなもので革の椅子やバッグに補色したらどうなるか。そう思われても不思議ではない。

しかし、此奴は靴クリームではないし、色移りもしないのだ。そして、色の種類も多い。ここでわざわざ紹介しないでも、誰でもググればすぐ分かることなので敢えて写真は載せないが、非常に様々な色のバリエーションを持っている。何より、合う色がなければ混ぜ合わせて作ることが容易なのだ。

アドカラーも捨て難い

実は革小物のちょっとした傷や、面積の小さい修理にはアドカラーというものの方が手軽に出来るし、私もよく使う。

これなのだが、指に直接つけて修理したい箇所に塗りつけるだけで、実に簡単に修復出来てしまう。これも便利品だ。傷の深いものには、まずキズ消し(上の写真の台紙が青いもの)で溝を埋めてから着色すればいい。比較的原色に近い色の革に対するちょっとした修理の時は便利だ。

これの欠点は、色のバリエーションがSAPHIRほど多くないという点だろう。勿論何色かを混ぜ合わせることで、ラインナップにない色を自分で作成することも可能ではあるが、微妙な色合いを作るのがなかなか難しい。また、乾燥するのが速いため、混ぜ合わせる場合は無水アルコールか水を加えることをお勧めする。

薄めて使うのが基本

以上の観点から、広範囲の皮革を補色するには、アドカラーよりSAPHIRの方が使い勝手が良い。何故なら、SAPHIRにはこういうものがある。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションは汚れ落としなのだが、補色クリームのシンナーとしても使える。いや、使う必要がある。補色クリームをこれで薄くのばして、何度も均一に塗り重ねるようにしないと綺麗に仕上がらない。必需品なのだ。つまり、購入する時はこうでなければならない。

そして、使う時はこうだ。

このように5倍から10倍にのばし、ウエスなどで「全体に薄く」塗り重ねていく。注意点としては、「気になるところを集中的にやってはいけない」ということだ。気になっても我慢して根気よく、と言っても数回濡ればその効果はすぐに目視できるほどに現れるので、それほどイライラすることはない。塗り重ねる際は完全に乾くまで待つ必要はなく、ある程度面積のあるものなら、全体を塗り終えた頃に塗り始めの箇所に戻って塗り重ねていく位で問題ない。それ以外にこれといったコツやノウハウはなく、仕上がりは下の写真のようになる。大事なことはこういうものがあるということを知っておくことだろう。

冒頭で示した修復前の状態と比べればその差は一目瞭然だ。あんな状態でも、この程度までは修復できる。

同様にちょっとお高いイタリア製のソファーも修復してみた。

こんなになってしまったクロコダイルのベルトも

この通りだ。因みに革の表面が荒れて剥がれてきてしまっていた部分は、下記(Scotch 皮革用強力接着剤)を使って接着した後に、SAPHIRで補色した。

仕上げには、何れもCollonil 1909 シュプリームクリームデラックスを使用した。


これも実に素晴らしいのでおすすめだ。こういうものを塗る時はウエス等につけて塗り込むのではなく、手につけて直接塗るべきだ。だって手だって動物の皮だ。これつけると手の状態もよくなるに決っている。決してウエスに残ってしまう分が勿体無いから・・・ではない。

2年半後

革の椅子を補修してから2年半が経過し、よく家事をしてくれる妻の椅子の痛みだけが再び目立ってきた。

このようにかなりひび割れも発生してしまっている。こうなるとそろそろ買い替えも視野に入ってくるが、家具も出会いが重要なのですぐに替えが見つかるとは限らない。

そこで一旦補修をしておくことにした。ここまでひび割れると、いきなりSAPHIR Creme Renovatriceを使うのは厳しい。まずはアドカラーシリーズの「アドベース」を使ってひび割れを埋める。

適当にひび割れを埋めたら、例によってSAPHIR Creme Renovatriceの出番だ。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションで適度に薄め、根気よく何度も塗り重ねていく。厚塗りは厳禁だ。

深いひび割れはどうにもならないが、替えの家具を探し当てるまでは何とかこれで保つだろう。