皮革の痛みはSAPHIRカラー補修クリームとアドカラーで何とかなる

皮革には経年劣化がつきもの

皮革製品は、長く使っていると徐々に傷んでひび割れてくる。そうならないように手入れを怠らないようにしたいものだが、財布や小物類ならともかく、ソファーやダイニングの椅子、車などのレザーシートやバッグ類となるとなかなかそうもいかず、段々とダメージが蓄積していく。革のバッグ類などもそうだ。どうしても色が退行したり、擦れて傷んでくる。痛み具合が酷くなると用廃となり、新しいものを買うことになるわけだが、それがちょっと値の張るものともなると、余程のお金持ちでもない限り、おいそれと買い換えるわけにもいかない。

修理業者は高い

そこで修復作業となるのだが、そういうものを生業としている業者は存在する。頼めば綺麗に直るらしい。しかし、問題はその費用だ。その技術が優れていればそれなりに費用もかかるのが道理だ。リペアの費用で新品が買えてしまうようなことはないが、「そんなにかかるならいっそ・・・」と考えてしまいたくなるほどにはかかるものだ。

自分で出来ることは自分でやる

今回は、そんな皮革修理に挑戦してみたので記録として残しておく。対象はダイニングの椅子だ。

一見綺麗に見えるものの、長年使い込んだ椅子は、よく見ると下の写真のように傷んでひび割れてしまっている。これを修復しようというわけだ。

最初にアセトンを脱脂綿に含ませ、革の表面の油脂分を拭き取る。これによる革に与えるダメージは大きいので、本当はあまりやらない方がよいと思う。革へのダメージを考えると専用の革クリーナーでもよい。今回は数日前に手入れクリームを塗ったばかりだったので、敢えて拭き取ることにした。ゴシゴシやらずにウエスでつけたアセトンでさっと拭き取る。


補色クリームなら絶対SAPHIR Creme Renovatriceがいい

修復にはフランスのAVEL社が出しているSAPHIR Creme Renovatriceを使う。日本語でググるなら「サフィール カラー補修クリーム」とかで検索できると思う。



もしかしたら、この記事を読んだ人の中には「こいつ馬鹿じゃね・・・」と思う人もいるのではないか。そう、SAPHIR(サフィール)って一般的には靴クリームなどでよく見かけるからだ。そして靴クリームは色落ちや色移りする代表的なものだ。そんなもので革の椅子やバッグに補色したらどうなるか。そう思われても不思議ではない。

しかし、此奴は靴クリームではないし、色移りもしないのだ。そして、色の種類も多い。ここでわざわざ紹介しないでも、誰でもググればすぐ分かることなので敢えて写真は載せないが、非常に様々な色のバリエーションを持っている。何より、合う色がなければ混ぜ合わせて作ることが容易なのだ。

アドカラーも捨て難い

実は革小物のちょっとした傷や、面積の小さい修理にはアドカラーというものの方が手軽に出来るし、私もよく使う。

これなのだが、指に直接つけて修理したい箇所に塗りつけるだけで、実に簡単に修復出来てしまう。これも便利品だ。傷の深いものには、まずキズ消し(上の写真の台紙が青いもの)で溝を埋めてから着色すればいい。比較的原色に近い色の革に対するちょっとした修理の時は便利だ。

これの欠点は、色のバリエーションがSAPHIRほど多くないという点だろう。勿論何色かを混ぜ合わせることで、ラインナップにない色を自分で作成することも可能ではあるが、微妙な色合いを作るのがなかなか難しい。また、乾燥するのが速いため、混ぜ合わせる場合は無水アルコールか水を加えることをお勧めする。

薄めて使うのが基本

以上の観点から、広範囲の皮革を補色するには、アドカラーよりSAPHIRの方が使い勝手が良い。何故なら、SAPHIRにはこういうものがある。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションは汚れ落としなのだが、補色クリームのシンナーとしても使える。いや、使う必要がある。補色クリームをこれで薄くのばして、何度も均一に塗り重ねるようにしないと綺麗に仕上がらない。必需品なのだ。つまり、購入する時はこうでなければならない。

そして、使う時はこうだ。

このように5倍から10倍にのばし、ウエスなどで「全体に薄く」塗り重ねていく。注意点としては、「気になるところを集中的にやってはいけない」ということだ。気になっても我慢して根気よく、と言っても数回濡ればその効果はすぐに目視できるほどに現れるので、それほどイライラすることはない。塗り重ねる際は完全に乾くまで待つ必要はなく、ある程度面積のあるものなら、全体を塗り終えた頃に塗り始めの箇所に戻って塗り重ねていく位で問題ない。それ以外にこれといったコツやノウハウはなく、仕上がりは下の写真のようになる。大事なことはこういうものがあるということを知っておくことだろう。

冒頭で示した修復前の状態と比べればその差は一目瞭然だ。あんな状態でも、この程度までは修復できる。

同様にちょっとお高いイタリア製のソファーも修復してみた。

こんなになってしまったクロコダイルのベルトも

この通りだ。因みに革の表面が荒れて剥がれてきてしまっていた部分は、下記(Scotch 皮革用強力接着剤)を使って接着した後に、SAPHIRで補色した。

仕上げには、何れもCollonil 1909 シュプリームクリームデラックスを使用した。


これも実に素晴らしいのでおすすめだ。こういうものを塗る時はウエス等につけて塗り込むのではなく、手につけて直接塗るべきだ。だって手だって動物の皮だ。これつけると手の状態もよくなるに決っている。決してウエスに残ってしまう分が勿体無いから・・・ではない。

2年半後

革の椅子を補修してから2年半が経過し、よく家事をしてくれる妻の椅子の痛みだけが再び目立ってきた。

このようにかなりひび割れも発生してしまっている。こうなるとそろそろ買い替えも視野に入ってくるが、家具も出会いが重要なのですぐに替えが見つかるとは限らない。

そこで一旦補修をしておくことにした。ここまでひび割れると、いきなりSAPHIR Creme Renovatriceを使うのは厳しい。まずはアドカラーシリーズの「アドベース」を使ってひび割れを埋める。

適当にひび割れを埋めたら、例によってSAPHIR Creme Renovatriceの出番だ。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションで適度に薄め、根気よく何度も塗り重ねていく。厚塗りは厳禁だ。

深いひび割れはどうにもならないが、替えの家具を探し当てるまでは何とかこれで保つだろう。