フローリングのガラスコーティングならビアンコートB

我が家を建築した際、入居前にフローリングのコーティングをするか住宅メーカの担当の方に聞かれたのだが、費用を聞くととてもそんな余裕はなかった。以来年に一度か二度フローリングにワックスをかけてきたのだが、これが意外に重労働だった。何せ毎回次のような工程を踏まなければならないのだ。

①フローリング上にあるテーブルやソファ等のあらゆる障害物を移動する

②既存のワックスを剥がす

③ワックスを塗る

④退けておいた障害物を元の位置に戻す

①②④が重労働なのだが、中でも特に②が大変な作業で、二階建ての我が家のワックスがけには毎度丸々2~3日かかる。

おそらく②をやらない方は多いのではないだろうか。だが汚れたワックスを剥がさずに上からワックスを塗ってしまうと、だんだんフローリングが黒ずんでいってしまう。特に我が家のような明るい色のフローリングの場合はそうだ。だから②は欠かせない工程なのだが、これが一番厄介で毎回苦労する。

それ故にワックス掛けは億劫になりがちで、やる気を出すまでに時間がかかる。だからと言って新築でもないのに数十万円もかけて業者にコーティングを頼む気にもなれない。そこで今回はワックスではなくコーティングを自前でやることにした。

用意したのは、「ビアンコートB」というものだ。DIYで施工できるコーティング剤は数種類市販されているが、施工方法を事前に調べることが出来たビアンコートBを選んだ。



では早速取り掛かることにする。まずは施工の邪魔になる障害物の除去からだ。

1 家具類の移動

ざっと見て、ソファ、センターテーブル、ストレスレスチェア、ダイニングテーブル、ダイニングチェア、電話代兼本棚、エレクトーン、テレビ、ステレオなどなど色々と邪魔だ。

しかも、どれも重量物ときてる。一人で何とかなるのはストレスレスチェアのみ。その他のものは基本二人がかりでなければ動かせない。エレクトーンとテレビ、ステレオ周りに至っては大の男が二人がかりでも厳しい。こいつらを別の部屋に移動しなければならない。そこで登場するのがこれだ。

「PICUS らくらくヘルパー360°ZP-360」。


重量級の家具を移動する道具は色々市販されているが、全方向に移動できるものは少ないので、これは重宝している。まあ、移動シーンを解説してもしようがないので、此奴を使って邪魔物を隣部屋に押し込んだ。

2 ワックス剥がし

何度も言うが本題の工程の内、一番大変な作業がこれだ。塗ってから半年、一年と使い込んだワックスは、そう易々とは除去できない。例年はリンナイ等から販売されているワックス剥離剤を使うのだが、今回はしっかりと除去するためにより強力なものを選んだ。

花王のプロワン。


5倍に薄めて使用する。この作業を行う際に絶対に必要なものは、100円ショップで買える風呂場用ブーツだ。これがないと、剥離剤を塗ってヌルヌルになったエリアから非作業領域に出るときに困る。こいつを履いて、剥離剤の希釈液をドボドボとフローリングに撒き、モップ等で塗り拡げていく。

ワックスと剥離剤が十分に反応するまで10分から15分かかるので、気温にもよるが折角塗った剥離剤が乾いてしまわないように、時々追加で希釈液を撒きながらモップで塗り拡げ続ける。十分に反応すると、ワックスがデロデロに浮いてくるので、これをそぎ取っていく。この作業には、ランダムアクションサンダーとカーボン製のスクレーパーを使用する。スクレーパーだけでは、しつこいワックスを完全に除去するのは難しい。

まず、ランダムアクションサンダーにワックス剥がし用のパーツ(別製品の物)を取り付け、剥離剤で反応したワックスに振動を与えてそぎ取り易くする。


その上でジワジワになったワックスをスクレーパーでそぎ取っていく。スクレーパーは柔らか過ぎるとそぎ取り難く、硬過ぎるとフローリングを傷つけるので、この様なカーボン製の物が適している。

フローリングの隙間に入り込んだ古いワックスも、ヘラで掻き出す。これをやらないとフローリングの板の間が黒い筋となって目立ってしまうからだ。元々塗った時のワックスは乳白色だが、半年から一年経過するだけでこのような灰色になっている。一応言っておくが、断じて拭き掃除を怠っていたからではない。

このようにしてワックスを剥がすと、床面の見た目でも剥がした部分と古いワックスが残っている部分の違いは歴然だ。

経年劣化したワックスは、上図の様に拭き掃除では取れない汚れで黒ずんでいるので、毎回黒ずんだワックスの上からワックスを重ね塗りしてしまうと、フローリングはその度にどんどん黒ずんでいってしまう。

剥離作業を終えたら、次は残留剥離剤を除去する。この作業にはスチーム洗浄機を使用する。

我が家ではケルヒャーのスチーム洗浄機を使用しているが、特にこれでなくてはいけないということはない。


ただスチーム洗浄機はある程度容量があるものがいい。容量が小さいとすぐにスチームが切れて水を補充しなければならない。しかし、一旦熱くなった本体は冷えるまでバルブが開けられないので、水を補充できるようになるまで時間がかかる。また、水を補充してから再びスチームが出るまで加熱にも時間がかかるため、容量の小さいスチーム洗浄機は作業性という点で使い物にならない。

スチームをかけては水拭きし、またスチームをかけては水拭きという作業を、フローリングの表面がヌルヌルしなくなるまで繰り返す。大体2~3度行えば綺麗に除去できる。その後は乾燥だ。フローリングが濡れたままではコーティングが出来ない。

十分にフローリングが乾燥したら、コーティング剤を塗る前にブタノールで脱脂する。無水アルコールなどでも構わないが、今回はビアンコートBに付属していたブタノールを化粧用のパフに染み込ませ、フローリング面を一通り拭いた。フローリングの上を裸足で歩いたり、コーティングする際にフローリングに素手で触れたりすると、皮脂が付着してコーティング剤がうまく乗らないので、ブーツを履いてゴム手袋をする。

3 コーティング剤塗布

コーティング剤の性質上、やり直しはきかない。塗りムラ、塗り残し、液垂れなどの失敗は許されないため、慎重且つ大胆に進めていく必要がある。塗り方の手順と塗り進める方向と順番を予めシミュレーションしてから一気に塗り進めなければならない。

広範囲を塗るため、ワックス用のモップを使用するが、新しいモップは糸くずが出るので掃除機で吸っておく。しかし、モップでは角の細かい部分に届かないため、最初に角をメラミンスポンジで極める。次にコーティング剤をモップにつけ、液垂れしないように扱いてから、一回で塗布する範囲を左右に動かして薄く均等に塗り拡げ、最後にモップの片側を上げて均す。イメージできたら一気にいく。

とは言え、本丸のリビングを初めにやるのは勇気がいるので、最初は廊下部分を施工した(上左図)。施工した部分と施工前の部分(右下)の差が明らかに分かる。両方施工を終えると、均等にフローリングの艶が蘇る(上右図)。

仕上がりに機嫌を良くして一気にリビングとキッチンも仕上げた。照明の違いで色合いが少し異なるイメージに見えるが、ほぼ均等に施工出来ている。後は乾燥させるだけだ。気温25℃だと三時間半ほどで乾燥するとのことだが、三時間半では歩いて問題ない程度にはなっだが、硬度はそれほどない感じがした。完全に硬化するまではもっと時間がかかるのだろう。

注意すべき点として、コーティング剤塗布中はエアコンを止めておくこと。エアコンを稼働させた状態で塗り進めると、乾燥が均一にならずところどころ下図のような硬化不良が発生する。もしかしたら、多少水分が残っていた影響もあるかも知れない。

こうなってしまったものは仕方がない。剥離は出来ないのでやり直しはきかない。慌てずスクレーパーでサクサクと削れるだけ削り、軽くサンドペーパーで均してからマスキングし、部分的に重ね塗りすれば問題ない。フローリングの継ぎ目で塗り直せば目立たない。

ちゃんとマスキングした方がよいが、メラミンスポンジで塗れば継ぎ目を外さずに正確な施工ができるので、塗ったところと塗ってないところが分からずに踏んでしまわないように目印を付ける程度で十分だ。

乾燥してコーティング剤が硬化したら、家具を戻して完成だ。

見た目はワックスを塗った後と大差ないが、明らかな違いは全く滑らないことだ。ワックスを塗った後に靴下などを履いて歩くと滑るので注意が必要だが、ビアンコートBの塗膜は全くそういうことがない。

そして何より良いのが被膜が硬いという点だ。ワックスだと頻繁に動かすダイニングテーブルの椅子の脚部周辺には、やはり細かい擦り傷がついていく。ワックス被膜は柔らかいので多少は自然修復されるが、やはり時が経つに連れて傷は増え、そこに汚れが付着し、艶が失われる。しかし、コーティング剤の被膜は硬いので、今の処新たに出来た擦り傷は認められない。

果たして、これで今後10年~20年塗膜が維持されるか否かは不明だが、今後の経過を観ていきたい。なかなか良い感じに仕上がったとは思う。

ダイニングテーブルを水性ウレタンニスで塗り直す

妻が五千円ほどのテーブルクロスをネットで買っていた。我が家ではテーブルにクロスはかけていない。暫くするとまた妻がテーブルクロスをネットで買っていた。妻がネットショッピングをすると私にメールが来るので分かるのだ。テーブルクロスも安いものではない。何があったのかと聞いてみると、妻の母親の家のダイニングテーブルの塗装が剥げたらしい。実際には剥げたのではなく、傷ついたダイニングテーブルをヘルパーさんが何とかしてくれようとした結果のようだ。それならと、塗り直してあげることにした。

見せてもらったところ、なるほどこれは酷い。どうやら紙やすりで削り、水性ニスを塗ったとのこと。原理的には間違っていないが、知識と技術と道具が足りない三重苦とも言える。このテーブルはウレタン塗装されているので、紙やすりで擦って部分塗装したのでは、むらなく修復することは困難だ。よって、ちゃんとやるには次のプロセスが必要になる。

工程1 ウレタン塗装を剥がす

工程2 木目を出す(これはオプション)

工程3 水性ウレタンニスを塗る(塗る度に表面を削り5~6度塗り重ねる)

工程4 磨く(水性ウレタンニスの完全硬化後)

では始めよう。

1 ウレタン塗装剥がし

紙やすりでやってもできないことはないが、延々と時間がかかる。紙やすりもどれだけの枚数が必要になるか分からない。ここはベルトサンダーが必需品だ。私は数千円で手に入る高儀 EARTH MAN ベルトサンダー BSD-110を用意した。

 

まずこやつに#60のヤスリベルトを付けて荒削りする。

次に#120のものに替えて更に削る。側で見ている義母と妻がビビっているが、こういうものはある程度思い切りというものが必要だ。

一通り天板を削り終えたが、ここからが厄介だ。ベルトサンダーはカンナのように平面を削るための工具だ。テーブルの端の曲面を削るのには向いていない。多分オービタルサンダーを使った方がよいのだろうが、何しろ時間がない。再塗装まで含めて一日で済ませたい。そこで少々技を使い、ここでも研磨力の強いベルトサンダーを使用する。ベルトサンダーの底部で削ると曲面が平らになってしまうので、ヤスリベルトを少しずらしてベルトサンダー本体からはみ出させ、ベルトのテンションをうまく利用して曲面に押し当てていく。

多少技術は必要だが、この様にするとベルトサンダーでも曲面を綺麗に削ることが可能だ。削りの仕上げには、ランダムアクションサンダーを使うと良い。私は吸塵機能のあるBOSCHのGEX125-1AEを使用した。

 

#180、#240、#400で表面を均して削り工程は終了だ。

2 木目出し

元の塗装は、あまり木目を見せない塗装だった。それを削り取ったところで、義母が「木目が綺麗に見えるわね。この白木の状態で使えないかしら。」と言い出した。使えないことはないのだが、白木の状態で使ったら、何かこぼしたりするとすぐ滲みになってしまう。オイル塗装してもよいが、その場合メンテナンスフリーという訳にはいかない。透明ニスでもよいかも知れないが、今回テーブルの足は塗装する予定にしていないので、色違いになって不自然なので勘弁してもらうことにした。その代りとして、ニスの塗り重ね回数を減らすために、ニス塗りの前にステインを塗る予定にしていたので、ステインを塗ってから一度削り、木目だけを残した状態にしてからニスを塗る工程に変更した。

まずはステインを塗る。

ステインを塗ると木目に色が染み込むので、ランダムアクションサンダーで表面を削ってやると、木目に染み込んだ色だけが残り、後でニスを塗った時に木目が強調される。

まあこんな具合だ。上図ではランダムアクションサンダーに曲面用アダプタをつけて削っているが、先程の曲面塗装剥がしはこれでも出来る。ただ、ランダムアクションサンダー用の紙やすりは、#180から上しか用意していなかったため、時間短縮のためベルトサンダー#120でやっつけた次第である。

3 ニス塗り

さて、いよいよニス塗りをするわけだが、ダイニングテーブルは実用品だ。毎日過酷な使われ方をする。よって普通の水性ニスでは塗膜が弱い。

そこで水性ウレタンニスを使用し、硬い塗膜を作る必要がある。

まずは一度ざっくり塗る。何度も塗り重ねては削るので、多少ムラになっても気にせず、なるべく薄く均等に塗り、乾燥させる。この時の気温は29℃。暑いのでエアコンを27℃設定で入れていた。塗料には普通インターバルタイムが仕様に示されており、この水性ウレタンニスの場合は25℃で90分と書かれている。塗り重ねるまでに必要な乾燥時間が、気温25℃では90分必要ということだ。このインターバル時間を守らないと、まともな塗膜が形成されない。しかし5~6回は塗り重ねたいので、90分は待てない。気温は指定時間より2℃高いとは言え、自然乾燥では30分の短縮は無理だろう。そこでドライヤーを併用することにした。そして一時間後、ランダムアクションサンダーの#400で削り、再びニスを塗る。

塗っては乾燥させ、削ってはまたニスを塗る。三度目の塗装からは刷毛ではなくコテパケを使って塗りムラをなくすように塗り重ねていく。

徐々に塗膜が深みを増し、艶も出てくる。5度塗りで終了。

 

いい感じになったら、#1200の耐水ペーパーで軽く水研ぎをする。

ここまでで作業は終了し、義母に一晩経ったら使ってもよいと伝え、一旦引き上げた。

4 磨き

最後に#3000以上の磨き粉でバフをかけるのだが、ニスを塗り重ねた当日は塗膜が完全硬化しておらず、バフがけの熱で塗膜が痛む可能性があるため、後日再度訪問して最終仕上げを行った。

これにて完成。一枚板ではないが無垢材ならではの木目の綺麗なダイニングテーブルが再現された。

非常に喜んで頂けたようなので、一件落着。家にある道具(ランダムアクションサンダー、研磨剤)の他、追加購入した道具(ベルトサンダー)と材料費(ステイン、水性ウレタンニス、100均の刷毛等)合わせて一万円以内で完成した。

5 経年変化(2020年5月17日現在)

公開から1年半が経過したので、義母が毎日使ってきたテーブルの状態を確認した。

汚れを拭き取っただけで、バフがけなどは行っていない。思ったより硬い塗膜が形成されているようで、目立つ傷は見られなかった。

5度塗りした水性ウレタンニスの塗膜は、良好な状態を維持している模様。

既に10年使ったそうだが、これならまだまだいけるね。

革靴を伸ばしてみた

当たって痛い革靴を伸ばす

妻がワンサイズ小さい靴を買った。彼女の靴のサイズは基本的に23cmなのだが、何を思ったか22.5cmのパンブスを買ったのだ。爪先と踵にしか足を覆う部分がなく、比較的柔らかい革を使用している靴だったので、履きなれてくると伸びてカパカパになるのを心配してのことだったのだが、案の定少し当たって痛いらしい。

仕方がないので、少し伸ばしてやることにした。靴を伸ばす際は、ストレッチ調整機能付きのシューキーパーか、専用のシューストレッチャーを使うのだが、今回はシューストレッチャーを使う。

このように形としてはシューキーパーと同様のものだが、伸ばすために先端部を広げられるようになっている。シューキーパーにもこれが出来るものもあるのだが、専用具には見ての通り数箇所穴が空いている。

何のための穴かと言うと、上の写真のように特に当たって痛い部分をピンポイントで伸ばすパーツを差し込む穴だ。元々空いている穴は位置が合わないので、適当な位置に自分で穴を開けて使う。

さて、早速伸ばしにかかるわけだが、こういう作業にもコツというものがある。革靴は、乾燥した状態で伸ばそうとしてもなかなか伸びるものではない。そんな簡単に伸びてしまったら履いたそばから伸びてしまいぶかぶかになってしまう。

履き込んだ靴が、足の形に伸びていくのは、履いている間に足が発汗し、湿った革靴が足の体温で温められ、浮腫んで膨張した足によって徐々に伸びていくのだ。よってこの状態を作り出さなければならない。革は、濡れた状態から乾燥する際に、濡れたときの形状を維持しようとする性質があるのでそれを上手に利用するのだ。したがって、革靴を伸ばすには次のようにする。

◆革を湿らせる(濡れると革は伸び易い)

◆ストレッチャーで広げる(拡げ過ぎに注意)

◆温める(温めると革は伸び易い)

◆放置する

注意すべきポイントは二つ。一つ目はストレッチを一度にかけ過ぎないこと。過度なストレッチをかけると革が破れたり、靴底との接着が剥がれたりする原因になるので、ストレッチは数回に分けて徐々に行うとよい。

二つ目は今回伸ばしたのはエナメルの靴に対する注意。言うまでもなくエナメルの靴は熱に弱い。絶対にドライヤーを当てるな等と書いているサイトもあるくらいだ。しかし、世の中に絶対などない。今回は温めることで革を柔らかくすることが目的なので適度にやれば問題ない。

いい感じに拡がった。妻も喜んでいる。彼女は右足の方が少し大きいらしく、もう一足痛いのがあるというのでついでに伸ばした。

革のグローブはサドルソープで洗え

皮革製品は洗える

革製品というのは水でジャバジャバ洗える。洗えるのだが、勇気がいる。特に値段の高いものを洗うには相当の勇気がいる。だが洗わないとまずいものも中にはある。それがグローブだ。

防寒用のグローブは一度買うと長年使う。長年使うとそれなりに表面も汚れがつくし、内張りだって汚れている筈だ。ゴルフのグローブなんて一度ラウンドすれば相当汗に塗れる。それらを放っておくとどうなるか。当然雑菌が繁殖し、不潔になり、場合によってはカビも生える。ゴルフのグローブの場合はそうなる前に大抵破れてしまうが、やはり不潔だ。

だから洗う。革が洗えなかったら、人間は風呂になど入れるはずがないし、動物だって水浴びするんだから、革は洗える。しかし、生きている動物の皮と違って、加工品である革は水分も油分も補給されないので、そこだけはしっかりやらないと、当然ごわごわになってしまう。逆にそれさえしっかりやれば革を洗うのに何の問題もない。

さて洗おう。今回洗うのは、もうかれこれ十年以上使っているMEROLAのグローブと、数百円で買えるゴルフグローブだ。洗うのに必要なのは、これだ。

モゥブレイのサドルソープ。


他にも色々あるのだろうが、私はいつもこれを使う。基本的には馬の鞍即ちサドルなどのなめし革を洗う時に使う専用の石鹸だ。これを濡らしたスポンジなどに取って泡立ててから、水に浸してたっぷり水分を含んだ革を洗う。最初は勇気がいるが、一度やってしまえばどうと言うことはない。

ここでコツというほどのものではないのだが、このソープの説明書にもある通り、洗った後はさっと水をかける程度で拭き取るのだ。普通の洗濯では石鹸成分が残らないようにしっかり濯ぐのだが、革をこのレザーソープで洗う際は成分が革に残る程度でよい。

次に、水分をしっかり取ってから乾燥させる。革靴を洗う場合はシューキーパーがあるので型崩れを防ぐことが出来るのだが、革のグローブでは流石にそんなものはない。ではどうするかだが、こうするのだ。

ヘアドライヤーで熱風を送り、グローブ内を空気で膨らませることで形を整える。皺が寄ったままで乾燥させると革に皺が定着してしまうからだ。この際に送風ではなく熱風を使うのは、送風じゃ乾かないから(笑)。

馬鹿言ってんじゃないよ、とプロには言われそうだが、これでいいの。こちとらセミプロだから。確かに、陰干しでやるのが良いに決まっているのだが、プロと違ってそんなことをしている暇など一般人にはない。

何故かと言うと、完全に乾燥させてしまっては駄目なのだ。半乾き、生乾きの状態で次のケアに移る必要がある。陰干しで放って置くとうっかり忘れて乾き過ぎてしまう場合があるので、このようにして一気に生乾きの状態まで持っていくのだ。

生乾きの状態になったら、次はモゥブレイのデリケートクリーム。

繰り返しになるが、ポイントは完全に乾燥する前の生乾き状態で塗り込むこと。乾燥してゴワゴワにしてしまってからでは元の質感を取り戻せない。十分に塗り込んだ後、デリケートクリームが浸透するのを待ってから、最後にこれだ。

Collonil の Supreme Delux Cream

これをしっかりと塗り込んで、あとは自然乾燥させて完成だ。ほぼ完全に元の質感のまま綺麗になった。

同様の手順でゴルフグローブも洗濯した。夏場、汗でぐちゃぐちゃになった革のグローブを、次のラウンドでも使うなんてあり得ない。但し、ゴルフグローブの場合は艶出しなど不要なので、Supreme Delux Cream は使用しない。逆に使用するとグリップが滑りやすくなってしまうのでNGだ。

皮革の痛みはSAPHIRカラー補修クリームとアドカラーで何とかなる

皮革には経年劣化がつきもの

皮革製品は、長く使っていると徐々に傷んでひび割れてくる。そうならないように手入れを怠らないようにしたいものだが、財布や小物類ならともかく、ソファーやダイニングの椅子、車などのレザーシートやバッグ類となるとなかなかそうもいかず、段々とダメージが蓄積していく。革のバッグ類などもそうだ。どうしても色が退行したり、擦れて傷んでくる。痛み具合が酷くなると用廃となり、新しいものを買うことになるわけだが、それがちょっと値の張るものともなると、余程のお金持ちでもない限り、おいそれと買い換えるわけにもいかない。

修理業者は高い

そこで修復作業となるのだが、そういうものを生業としている業者は存在する。頼めば綺麗に直るらしい。しかし、問題はその費用だ。その技術が優れていればそれなりに費用もかかるのが道理だ。リペアの費用で新品が買えてしまうようなことはないが、「そんなにかかるならいっそ・・・」と考えてしまいたくなるほどにはかかるものだ。

自分で出来ることは自分でやる

今回は、そんな皮革修理に挑戦してみたので記録として残しておく。対象はダイニングの椅子だ。

一見綺麗に見えるものの、長年使い込んだ椅子は、よく見ると下の写真のように傷んでひび割れてしまっている。これを修復しようというわけだ。

最初にアセトンを脱脂綿に含ませ、革の表面の油脂分を拭き取る。これによる革に与えるダメージは大きいので、本当はあまりやらない方がよいと思う。革へのダメージを考えると専用の革クリーナーでもよい。今回は数日前に手入れクリームを塗ったばかりだったので、敢えて拭き取ることにした。ゴシゴシやらずにウエスでつけたアセトンでさっと拭き取る。


補色クリームなら絶対SAPHIR Creme Renovatriceがいい

修復にはフランスのAVEL社が出しているSAPHIR Creme Renovatriceを使う。日本語でググるなら「サフィール カラー補修クリーム」とかで検索できると思う。



もしかしたら、この記事を読んだ人の中には「こいつ馬鹿じゃね・・・」と思う人もいるのではないか。そう、SAPHIR(サフィール)って一般的には靴クリームなどでよく見かけるからだ。そして靴クリームは色落ちや色移りする代表的なものだ。そんなもので革の椅子やバッグに補色したらどうなるか。そう思われても不思議ではない。

しかし、此奴は靴クリームではないし、色移りもしないのだ。そして、色の種類も多い。ここでわざわざ紹介しないでも、誰でもググればすぐ分かることなので敢えて写真は載せないが、非常に様々な色のバリエーションを持っている。何より、合う色がなければ混ぜ合わせて作ることが容易なのだ。

アドカラーも捨て難い

実は革小物のちょっとした傷や、面積の小さい修理にはアドカラーというものの方が手軽に出来るし、私もよく使う。

これなのだが、指に直接つけて修理したい箇所に塗りつけるだけで、実に簡単に修復出来てしまう。これも便利品だ。傷の深いものには、まずキズ消し(上の写真の台紙が青いもの)で溝を埋めてから着色すればいい。比較的原色に近い色の革に対するちょっとした修理の時は便利だ。

これの欠点は、色のバリエーションがSAPHIRほど多くないという点だろう。勿論何色かを混ぜ合わせることで、ラインナップにない色を自分で作成することも可能ではあるが、微妙な色合いを作るのがなかなか難しい。また、乾燥するのが速いため、混ぜ合わせる場合は無水アルコールか水を加えることをお勧めする。

薄めて使うのが基本

以上の観点から、広範囲の皮革を補色するには、アドカラーよりSAPHIRの方が使い勝手が良い。何故なら、SAPHIRにはこういうものがある。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションは汚れ落としなのだが、補色クリームのシンナーとしても使える。いや、使う必要がある。補色クリームをこれで薄くのばして、何度も均一に塗り重ねるようにしないと綺麗に仕上がらない。必需品なのだ。つまり、購入する時はこうでなければならない。

そして、使う時はこうだ。

このように5倍から10倍にのばし、ウエスなどで「全体に薄く」塗り重ねていく。注意点としては、「気になるところを集中的にやってはいけない」ということだ。気になっても我慢して根気よく、と言っても数回濡ればその効果はすぐに目視できるほどに現れるので、それほどイライラすることはない。塗り重ねる際は完全に乾くまで待つ必要はなく、ある程度面積のあるものなら、全体を塗り終えた頃に塗り始めの箇所に戻って塗り重ねていく位で問題ない。それ以外にこれといったコツやノウハウはなく、仕上がりは下の写真のようになる。大事なことはこういうものがあるということを知っておくことだろう。

冒頭で示した修復前の状態と比べればその差は一目瞭然だ。あんな状態でも、この程度までは修復できる。

同様にちょっとお高いイタリア製のソファーも修復してみた。

こんなになってしまったクロコダイルのベルトも

この通りだ。因みに革の表面が荒れて剥がれてきてしまっていた部分は、下記(Scotch 皮革用強力接着剤)を使って接着した後に、SAPHIRで補色した。

仕上げには、何れもCollonil 1909 シュプリームクリームデラックスを使用した。


これも実に素晴らしいのでおすすめだ。こういうものを塗る時はウエス等につけて塗り込むのではなく、手につけて直接塗るべきだ。だって手だって動物の皮だ。これつけると手の状態もよくなるに決っている。決してウエスに残ってしまう分が勿体無いから・・・ではない。

2年半後

革の椅子を補修してから2年半が経過し、よく家事をしてくれる妻の椅子の痛みだけが再び目立ってきた。

このようにかなりひび割れも発生してしまっている。こうなるとそろそろ買い替えも視野に入ってくるが、家具も出会いが重要なのですぐに替えが見つかるとは限らない。

そこで一旦補修をしておくことにした。ここまでひび割れると、いきなりSAPHIR Creme Renovatriceを使うのは厳しい。まずはアドカラーシリーズの「アドベース」を使ってひび割れを埋める。

適当にひび割れを埋めたら、例によってSAPHIR Creme Renovatriceの出番だ。

SAPHIR ユニバーサルレザーローションで適度に薄め、根気よく何度も塗り重ねていく。厚塗りは厳禁だ。

深いひび割れはどうにもならないが、替えの家具を探し当てるまでは何とかこれで保つだろう。

LANケーブルを張り替えたらネットが速くなったCAT5⇒CAT6a

家を建てた際、LANケーブルを壁の中で通して各部屋に情報コンセントを設置した。当時既に無線LANも普及していたが、有線LANはどうしても必要だった。何故なら当時は今で言うゲーマーに近いものがあったから。無線LANはスペック上は高速なのだが、スループットと安定性に於いて有線LANに遠く及ばない。それは今でも変わらない。

ネットサーフィンしているだけなら全く問題ないが、ゲームとなると話は別だ。数ミリ秒から数十ミリ秒の遅れで命取りになるからだ(笑)。パソコンで動画を観たことのある人なら経験があると思うが、たまに動画が止まることがあるだろう。原因はサーバー側の処理遅延、回線の伝送遅延或いは回線が切断と接続を繰り返すことで起きる場合もある。そういうのはゲーミング中には許容できない。

前置きが長くなったが、この度LANケーブルの張替えを行ったので記録に残しておきたい。家を立てたのは丁度2000年、ケーブルは既にCAT5eが出始めていたが、当時の通信事業者の提供する回線速度は100Mbps以下であったため、CAT5で張ってしまった。今思えばCAT5eで張っておけばよかったと後悔しているが、既に後の祭りだ。

その後ネット回線のサービスレベルは見る見るうちに上昇し、今では1Gbpsは当たり前、2Gbpsでサービスする通信事業者も存在している。というわけで、これまでケーブルテレビの320Mbpsのネット回線(拙宅近辺では実効速度100Mbps未満)を契約していたのだが、光コラボレーションの1Gbps回線への乗り換えを機に、それに合わせて壁の中を這っているLANケーブルの張替えを行うこととした。

WAN側が1GbpsなのでケーブルのスペックはCAT5e以上が必要だ。2018現在、CAT7まで製品が出ているが、CAT7はSTPケーブルであり、シールドをしっかりアースする工事を自前で行うのはちょっと大変だ。電源コンセントの接地極(通常は大きい方の穴)に接続すれば良いだけなのだが、家を建てた時電気工事を担当したオサーンがちゃんと工事しているかどうか不安だ。逆になっていないとも限らない。きっちり確認しながらやらないとヤバイのと手間がかかるのでCAT7はパス。そもそもCAT7対応のケーブルを自作するキットが2017年末現在売っていない。

そこでケーブルには、UTPで最速のCAT6aを使うことにした。基本的にケーブルも自作するので、部材にはELECOM CAT6a 50m ストレートケーブルとCAT6対応RJ45モジュラジャックを購入した。


用意した道具は下図の通り。

特別な道具は特にないが、ニッパー、皮むき器、コネクタのかしめ器、ケーブルテスターなどは最低限必要だ。



では早速作業に入ろう。

1 既存のケーブルを撤去
まずは、敷設されている既存のLANケーブルの撤去に取り掛かる。
既設の情報コンセントからLANケーブルを外す。こういう狭いところの作業ではjmsで貰ってきたLEDのランタンが役に立つ。
情報コンセント自体も取り外して、壁の中を通って二つの部屋間を結んでいる既設ケーブルを引き抜く。
2 新しいLANケーブルを敷設
次に新しいケーブルを敷設するわけだが、こういう時のために壁には塩ビのチューブを予め敷設してある。ケーブルをその中に通す際、プロは金属ワイヤー製のケーブル通しを使うが、当然そんなものは持っていない。買っても大した値段ではないが、恐らく次に使うのはまた10年以上先になるので買わないで済ませたい。そこで今回は荷造り用の紐を活用した。
ケーブルを通すチューブに紐を入れ、掃除機で反対側から吸い出す作戦だ。
掃除機のノズルの吸い出し込み口が細くなるように細工をし、チューブの反対側から吸い出すと、いい具合に紐が吸い出されてきた。紐が吸い出されたかどうかは音の変化で分かる。掃除機のパイプの中まで紐が入るとはためく音がするからだ。
次に送り側の紐に敷設するケーブルを結び、反対側から紐を引っ張ってケーブルをチューブに通す。この作業をケーブルの本数分繰り返す。我が家では三本あるので四部屋での作業になる。
3 新しい情報コンセントの設置
無事ケーブルが通せたので、次はケーブルの両端をCAT6対応のモジュラーコンセントに接続する。これにはパナソニックの「ぐっとすCAT6」が工具不要で便利だ。

まずはケーブルの外皮を剥き、中のツイストペアをバラす。

続いて、「ぐっとす」のタイプBの配列で各色の導線をコネクタに配置し、しっかりと挿し込んでカバーを嵌めてから余分な導線をカットする。外皮を剝いた部分を両側に四つずつある接点の中心に置き、シールドが解かれた導線の長さを短く均一にしようかとも考えたが、そうすると差込口に近い方の導線が鋭角に曲がってしまうため、インピーダンスの変化で信号が反射しやすくなってしまう虞れがあり写真の通りとした。写真では大きく長く見えるが、実際シールドが解かれている長さは1cm程度だがオレンジと茶色は、もう少し撚り線を解かない様にした方が良いかも知れない。速度が出なかったら見直すべきポイントだろう。

あとはパネルに固定して壁に嵌め込めば、ルータ設置側の完成だ。
PC設置側も同様に処理する。元は下左図(表側)と下中図(裏側)の様なパネルと固定金具一体式の凝った作りの物を使用していたが、今回は「ぐっとす」がパナソニック製なので、相性を考慮して同じくパナソニック製のものを採用した。
これでPC設置側も完成だ。多少面倒なだけで難しいことは何もない。
4 接続用LANケーブルの作製
続いてルータと情報コンセント及び情報コンセントとPC間を接続するLANケーブルの作製に取り掛かる。これも至って簡単であり、基本的にはケーブルを必要な長さに切断する、ケーブルの外皮を剥く、ツイストペアを解す、RJ45コネクタに順番通り解したケーブルを差し込む、かしめて固定するという五工程で出来る。
上の中央の写真を見ると分かるように、CAT6のケーブルには中に十字型のセパレータが入っている。CAT5のケーブルにはこれがない。左から順に工程を進め、右端で切り揃えたところだ。ここからがCAT5とCAT6のケーブルで違いがある部分となる。下の写真で左側がCAT5、右側がCAT6だ。CAT6には差込用のガイドがある。
何故かと言うと、更に下の写真で左側がCAT5、右側がCAT6となっているが、違いは撚り線を解いている長さが違う。CAT5では14mm程度あるが、CAT6では8mm以下だ。この長さではガイドがないとコネクタ部に差し込むことが出来ない。
つまり工程上のCAT5とCAT6の違いは、撚り線を解くことが許される長さが違うということだ。導線を挿し込んだ状態で違いが明らかだと思う。
これさえ守れば、あとはかしめて完成だ。
ケーブルを作成したら、ケーブルテスターでチェックを行う。
点灯状態が同期したら異常なく作製できていることを表している。同じものを必要な本数作成して、ルータ及びPCを上記で敷設した情報コンセントに接続すれば完成となる。
ネットワーク速度測定サイトで早速確認してみると、上下500Mbps程度出ている。もうちょっと出てもいい気がするのと、上りの方が速いのが気になるが、疲れたので取り敢えず今回はこれで良しとする。
5 最後に
注意すべき点として、CAT6ではCAT5より伝送帯域が広くなり、より高周波となっているため、ノイズに対してシビアだ。従って、上記でも示したように極力撚り線を解く長さを短くすべきである。
加えて、折り曲げたり、無理なテンションを掛けたりしてはいけない。そうしてしまうとそこで撚り線が折れ曲がり、インピーダンスに変化が生じてしまうからだ。信号を流す導体のインピーダンスが一定でないと、高周波ではそこで起きる反射が無視できなくなる。一度でも折り曲げてしまったら、その部分はカットして使わないようにしよう。
要すれば、高速なケーブルになればなるほど扱いにデリケートさが要求されるということだ。

車の窓ガラスのシール剥がしにはスクレイパー

紙のシール剥がしならハガールとか

昔、紙のシールとか切手剥がしにハガールとかいうものを使ったことがある。今でも類似のものはあると思うが、要するによく浸透して糊の接着力を弱めて剥がすという原理のもの。

しかし、最近はシールやステッカー自体が水濡れに強い素材であったり、接着剤そのものが強力になっていて、ハガール類では太刀打ちできないケースが多い。

車のリアウィンドウのシールは厄介

特に車のリアウィンドウにデフォルトのように貼られてくる「XXX適合車」とかいうアレ。目障りだし格好悪いから是非剥がしたいが、何しろ雨風に負けず、夏の日差しにも耐える奴らだから、ハガール類では到底太刀打ちできない。

スクレイパー登場

そこで使うのがスクレイパー。世の奥様方なら一つは持っているだろうスクレイパー。でも実はスクレイパーって、用途別に実に色々ある。流石に鍋底を攫うキッチン用では歯が立たないが、今回使ったのがこれ。数百円だが、数あるスクレイパーの中でこれが一番。

何のことはなく、薄刃の金属製の板をステッカーの端からグイグイ押し込んで剥がすだけなのだが、これが実に綺麗に剥がれる。ウィンドウガラスを傷つけないか心配になるが、そのようなことはなく傷などつかなかった。

ガラスボトルのラベルなども綺麗に剥がせる。多分こびりついたペイントとかもこれでいけると思うのでそのうち機会があれば試してみようと思う。

 

【今回の教訓&勘所】

特にないが敢えて言うなら

一、道具は偉大だ(笑)

一、多分カッターの替刃でもガラスボトルのラベル剥がし程度なら代用できる